不祥事やトラブルによる降板という逆境の中で、急きょバトンを受け取った俳優たち。重圧と比較の目にさらされながらも、独自の解釈と存在感で作品を立て直し、時に前任者以上の評価を獲得してきた。そこで今回は、代役という試練をチャンスへと変え、株を上げた5人の俳優たちを振り返る。第4回。(文・編集部)
作:宮藤官九郎
演出:井上剛、西村武五郎、一木正恵、大根仁、桑野智宏、林啓史、津田温子、松木健祐、渡辺直樹、北野隆
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ、浅野忠信、麻生久美子、綾瀬はるか、生田斗真、池波志乃、大竹しのぶ、神木隆之介、桐谷健太、小泉今日子、杉咲花、竹野内豊、寺島しのぶ、中村獅童、星野源、松坂桃李、松重豊、薬師丸ひろ子、役所広司、リリー・フランキー
【作品内容】
1912年の初参加から1964年東京五輪までの52年を、金栗四三(六代目中村勘九郎)と田畑政治(阿部サダヲ)を軸にリレー形式で描く。
落語家・志ん生の語りと共に、日本と五輪の歩みを活写する。
【注目ポイント】
宮藤官九郎が脚本を手がけた大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』。
放送途中の不祥事により、出演していたピエール瀧が急きょ降板。
その代役という重いバトンを受け取ったのが舞台や映画で確かな実力を誇る三宅弘城だった。
物語が佳境へと向かおうとしていた2019年3月、ピエールが演じていた「足袋の播磨屋」店主・黒坂辛作は、主人公の走りを支える極めて重要なポジションにあった。
作品の行方すら危ぶまれる中で白羽の矢が立ったのが、脚本の宮藤をはじめ、阿部サダヲや星野源らが所属する大人計画の俳優・三宅である。
本作は、日本が初めてオリンピックに参加した明治期から1964年の東京オリンピック開催まで、激動の52年間を描く物語。
三宅が引き継いだ黒坂辛作は、東京・大塚の足袋屋「播磨屋」の店主であり、金栗四三の並外れた走りに惚れ込み、マラソン専用足袋、さらにはマラソンシューズの原型開発に情熱を注ぐ人物。
単なる脇役ではなく、主人公の挑戦を足元から支える重要な存在であった。
ピエールが体現していた豪快で恰幅の良い職人像とは異なり、三宅はまた別の魅力を放った。
小柄ながら鍛え上げられた体躯からは、長年金槌を振るってきた職人のリアリティが自然とにじむ。
派手さではなく、実直さと執念で勝負する佇まい。途中交代とは思えない自然さがあった。
不祥事という負のニュースから始まったキャスティング変更。
しかし三宅は、持ち前の職人気質な演技と献身的な姿勢で作品を新たな魅力へと昇華させた。