松山ケンイチ主演のドラマ『テミスの不確かな法廷』(NHK総合)。本作は、『宙わたる教室』の制作チームが手掛ける新たな法廷ヒューマンドラマだ。発達障害を抱えた裁判官が、自らの特性と格闘しながら難解な事件に挑む。今回は第6話のレビューをお届け。(文・ばやし)【写真】齋藤飛鳥に心を奪われた…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『テミスの不確かな法廷』第6話劇中カット一覧
冤罪被害者を救うための最後の手段である再審制度。しかし、かつては「開かずの扉」とも呼ばれていたように、その道のりは困難を極める。
1966年に起きた「静岡一家4人殺害事件」いわゆる“袴田事件”の再審が開始されたのは2023年。実に57年もの歳月を要した。
ドラマ『テミスの不確かな法廷』の第6話では、劇中で何度も耳にする「前橋一家殺人事件」の再審請求審に関わるべきか葛藤する安堂(松山ケンイチ)の記憶と、事件の判決に関わった安堂の父・結城(小木茂光)の過去が結びついていく。
再審請求の弁護士チームに加わった小野崎(鳴海唯)の口から事件の概要が語られる。
犯人として逮捕された秋葉一馬(足立智充)は被害者家族に恨みを抱いており、殺害の動機があったとされている。
彼は検察の取調べにおいて、犯行を自供したことで有罪が確定。逮捕から7年という異例の早さで死刑が執行された。
しかし、事件から25年の月日が経過したあと、娘の亜紀(齋藤飛鳥)が父親のアリバイを証明する可能性を秘めたVHS映像を発見する。彼女の誕生日の前日に撮影された映像には、犯行時刻に秋葉が亜紀とともに自宅にいたことを示唆していた。
その場で再審開始を認めるか否かで話し合いが行なわれるなか、安堂はもうひとつ別の迷いを抱えていた。
それは自身がこの審理に関わるべきかどうか。なぜなら秋葉の自白を引き出した当時の検察官こそ、彼の父親に他ならなかったからだ。
「今度は真実を握りつぶさないでください」と話す精神科医の山路(和久井映見)に対して、「真実とはときに思い込みにすぎませんよ」と返す結城の頑なな態度は、35年前に妻の朋子(入山法子)との間に生まれた赤ん坊を抱く彼の表情とはまるで違う。
澄み切って不純物が一切ない清らかの“清”と希望の象徴でもある“春”で、“清春”と名付けられた子どもがすくすくと成長していくなか、両親を悩ませていたのは、興味や好奇心があちらこちらに向けられる彼の突飛な行動だった。
現代であれば発達障害と診断される行動も、当時はまだ十分な理解が得られておらず、親のしつけの問題だと責任を押しつけられていた。
徐々に2人の間に険悪なムードが流れ始めるなか、朋子が起こした事故が決定打となり、安堂が12歳のときに離婚が成立する。
そして、両親の言い争いの渦中にいた安堂もまた、耳を塞ぎながら2人の喧嘩の原因は自分にあるのだと思い込むようになっていた。
父親の日記に書かれていた「どうしてあの子は普通じゃないんだ。まるで宇宙人だ」という言葉は、彼が自己暗示のように「僕は宇宙人」と脳内で呟くようになったきっかけとも言える。
幼い安堂がページをめくる手を止めた寂しげな背中が脳裏に焼きついていた。