各界の著名人が気になる本を紹介する連載「読まずにはいられない」。今回はプロインタビュアーの吉田豪さんが、『人生はとんとん 成田昭次自叙伝』(成田昭次著)を取り上げる。AERA 2026年2月2日号より。【写真】活動休止、逮捕、芸能界引退、そして復活。成田昭次が半生のすべてを語る* * *
いろいろあって「芸能界を引退し、消息不明だった」男闘呼組・成田昭次が「すべてを赤裸々に語る著者渾身の自叙伝」。
期待してページをめくると、1行目が「約200年にわたる『地の時代』が終わり、2020年12月、木星と土星の会合『グレート・コンジャンクション』を機に『風の時代』が始まった。西洋占星術における『革新』と呼ばれるその風は、僕にとってとてつもない転機をもたらした」だったから正直面食らった。
つまりこれは男闘呼組活動休止後、事務所を辞め、離婚し、大麻取締法違反で逮捕され、けじめとしてギターをやめ、兄が自死し、「俺のせいだ。俺が死なせたんだ」と「希死念慮を抱き、兄の後を追おうとすることも何度もあった」ぐらいに追い込まれた彼が2020年に男闘呼組として再起するまでの物語だ。しかし、「スペシャル企画 男闘呼組、『明星(Myojo)』フォトメモリー」なんてページがあって版元も「明星」の集英社だからなのか、実はかなりアイドル雑誌っぽいバランスで作られているのである。
なにしろジャニー喜多川の性加害についてもジャニーズ事務所が消滅したことにも一切言及しないし、むしろポジティブな文脈でしか名前が出てこないことにも驚いた。
社長の「ユーたちは不良でいいんだよ。生意気なこと言えば言うほど、カッコいいんだよ」のアドバイス通り不良化したエピソードもそうだし、「ジャニー喜多川のお別れ会」の「案内状、送っていい? みんな、昭次に来てほしいって言ってるよ」と岡本健一に言われて「26年ぶりの再会」を果たしたり、10年ぶりにギターを手にして27年ぶりに男闘呼組の4人が揃ってスタジオに入ると、やっぱり岡本健一に「せっかく4人がそろったんだから、社長の墓参りに行こうぜ」と言われてみんなで行ったり……。
彼らにはジャニー喜多川に対する悪い思い出が何もないってことかもしれないけど、だったらせめて「いろんな報道もあったが、俺たちにとっては恩人だ」とか言うべきじゃないかと思うのであった。
よしだ・ごう◆1970年生まれ。書評家、プロインタビュアーにして連載が20を超える人気ライター。著書に『超・人間コク宝』『書評の星座 紙プロ編』『吉田豪の部屋の本 vol.1』『帰ってきた 聞き出す力』など。
※AERA 2026年2月16日号