1999年のある日、インターネットで突然、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」(88年に東京都足立区で発生)の犯人の1人だとデマを流された。事件当時、少年4人が逮捕されたが名前は公表されなかった。僕は足立区出身で犯人と同世代。それだけで出所不明の「犯人一覧」なるものに名前が載り、一気にデマが拡散した。
僕の所属する芸能事務所が「事実無根」と否定。それでもネットやファクスで「人殺しをテレビに出すな」「死ね」と、誹謗[ひぼう]中傷はやまない。殺害予告で番組出演を取りやめたこともあるし、今も新たな書き込みがある。まさか25年以上続くとは思いもしなかった。
相談窓口や弁護士、警察…。被害を訴えても誰も助けてくれないことが怖かった。9年たって、まだ数少なかったネット犯罪に詳しい刑事と出会い、しかも当該事件に携わった経験から「芸人になった犯人はいない」と断言し、捜査してくれた。
2009年、全国各地の17~46歳の男女19人が名誉毀損[きそん]容疑などで摘発された。彼らは「悪いやつを懲らしめる正義感のつもりだった」「ネットにだまされた」と言うが、デマを作った人だけでなく拡散した人たちも加害者。僕は本当に苦しめられた。
情報に接した時、正しい内容か、注目を集めたいだけではないか、証拠はあるのか、いつの発信か、精査する力を身に付けることが大切だ。地震など災害時もデマが拡散した。実名でも言える、責任が持てる言葉だけを発信するべきだ。匿名のつもりでも、調べれば本人にたどり着く。
被害に遭ったら、証拠はスクリーンショットなどで保存し、相手の挑発には乗らないで。僕はネット上でやり合わず、距離を取り被害者の立場を明確にした。
最近は、選挙になると誹謗中傷とデマが飛び交う。新聞やテレビを「オールドメディア」と呼び、「ネットが真実」と声高に言うが、そんなわけない。ネットは、自分が検索した言葉に関連した偏った情報ばかり表示される仕組みになっており、視野を狭める危険性がある。「これだ」と信じても、一度離れて新聞などを読み、周囲と話してみてほしい。
僕は体験を本にして、ネット上の人権の観点から、いじめや情報リテラシーについての講演活動をしている。子どもたちに講演するときは、優しい言葉を使うよう伝えている。=昨年11月19日、阿蘇市であった市人権フェスティバルで(宮崎あずさ)