粉飾事件で逮捕「旧すてきナイス」元経営者がやり直し裁判で逆転無罪の真相――「会計基準」を無視して暴走した地検の“誤算”と6年半の苦闘

上場企業が株式を発行することは、お札を刷ることに近い。株式市場でつく株価で資金を得ることができるためだ。【写真】判決の後に弁護団と記者会見した平田恒一郎さん(中央)と弁護団それだけに、決算をよく見せる「粉飾」は投資家をだます行為として、金融商品取引法では10年以下の拘禁刑などの厳しい罰則が設けられている。この粉飾事件をめぐって12月、横浜地裁で画期的な裁判の判決があった。

 それは、企業会計基準に照らして“粉飾といえるのか”だけを争点に審理がなされ、70代の2人の経営者に「無罪」が言い渡されるというものだった。5日の控訴期限までに検察が控訴しなかったため、2人の無罪が確定した。
■常識が通じない世界

 決算書は会計基準に基づいて作られるのだから、会計基準で判断するのが当たり前ではないかとの疑問を持った読者は常識人だ。ところが、粉飾事件が審理される裁判所では、その常識が通じないことが珍しくない。

 今回の裁判は、横浜市に本社がある「すてきナイスグループ」(現・ナイス)という住宅関連会社の元会長と元社長が、2015年3月期の有価証券報告書(有報)で決算を粉飾したとして、2019年に横浜地検特別刑事部に逮捕されたことに端を発する。
元会長の平田恒一郎さん(77)は粉飾について否認を続け、86日間勾留された。無罪判決後の記者会見では「一度も事情聴取がなく、事情聴取に呼び出された日に逮捕された。ターゲットを私に絞って調書を集めていたものと思われる」と主張。

 さらに「慢性骨髄性白血病のほかに糖尿病、心臓病、腎臓病などを患っていた。勾留中に悪化し、むくみで肺の3分の1に水がたまった。死を覚悟させられた」と、強引な捜査だったことを明かした。
元社長の日暮清さん(74)も記者会見で、逮捕前に約40回にわたって横浜地検に任意の事情聴取を受けたことを明かした。

 それは「1日おきに午前中や2時間程度から始まって、最後は連日フルタイムになった」というもので、「地検の事務所から自分の家まで、どうやって帰ったかわからないぐらいのプレッシャーを受けた。任意(捜査)のときにこそ、録音録画による可視化が有効だ」と語った。

■二審で一審を破棄・差し戻す

 裁判は、一審の横浜地裁が2021年に有罪判決を出すものの、二審の東京高裁が2022年に一審を破棄・差し戻し。横浜地裁の差し戻し審で無罪が言い渡される展開となった。2人の逮捕から6年半以上が過ぎていた。

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