売上総額は1200万円余り。扱った薬物は乾燥大麻1.8キロをはじめ、合成麻薬のMDMAやLSD、コカインと多種大量-。薬物の売人だったとして麻薬特例法違反などの罪に問われた男と女は、互いに顔を合わせないまま法廷で横並びに座り、罪を認めた。▶「もうできません」。泣きつく女に「お前は犯罪者だ。孫に危害を加えるぞ」――闇バイト 恐怖で言いなりになった母は、息子や娘の前で一部始終を明かした〈法廷傍聴記〉
共に20代無職。2021年に友人を通じて出会い、交際した。男は1年後、建設業を辞め、ギャンブルなどで数百万円の借金を抱えた。違法薬物の密売に手を出したのは、「昔から買って使っていた。だから、売るノウハウも知っていた」と法廷で明かした。
インターネット上で知り合った人から買い、主にX(旧ツイッター)で宣伝。接触してきた客とは秘匿性の高い「テレグラム」でやりとりした。ほとんどは郵送で受け渡し、週末には対面で売ることもあった。
女は、薬物を仕入れる資金として男に数十万円渡したのをきっかけに加担。薬物の小分けを手伝うようになり、車の運転も担った。
警察対策も手が込んでいた。交流サイト(SNS)で他人名義の口座を購入。知人から借りたアパートを薬物を保管する拠点とし、2人は「ヤサ」と呼んだ。そこでは液体のLSDをグミにしみこませる作業をし、“味見”と称してあらゆる薬物を毎日使った。
「罪悪感はあったが、彼に喜んでほしかった」。売り上げの管理や対面で売ることもあった女は、男への心情を明かした。逮捕された時、「やっと終わるのか」とほっとしたという。
その後、男に手紙で別れを告げた。出所したら県外の実家で家族と暮らす予定で、傍聴に来ていた母親や兄弟を見ると涙ぐんだ。
対照的に、男の受け答えは淡々としていた。取り調べで女の関与を否定していた理由を「かばいたかった」と説明。犯行については「浅はかだった」とはっきりとした口調で語った。
裁判官に「薬物依存からどうやって抜け出すか」と聞かれると、それまでよどみなく応じていた男は初めて沈黙した。しばらくして「今ぱっと言えることはない」とつぶやいた。
出所後は、父親が経営する建設会社で働くという。「別々の道で頑張る」と女との別れも受け入れた。
判決は、男が懲役6年罰金200万円、女は懲役4年6月罰金150万円。
閉廷後、傍聴席にいた知人らしき男女数名が「頑張れよ」と笑いながら叫んだ。女は顔を見ないまま会釈し、男は手錠を掛けられた両手をおどけるように掲げた。