【バンコク=水野哲也、ハノイ=竹内駿平】カンボジアの特殊詐欺組織に対する国際的な摘発の動きが加速している。カンボジアはカジノなどを拠点とする組織が国家中枢と密接に結びついているとされ、国際的な摘発がそうした構造に切り込めるか注目される。
米財務省と英政府は10月14日、カンボジア最大の複合企業の一つ「プリンス・ホールディング・グループ」のチェン・ジー会長や関連企業に経済制裁を科すと発表した。
米財務省は、グループがカンボジアの首都プノンペンの中核企業を中心に世界各地に拠点を置き、特殊詐欺や投資詐欺、資金洗浄などで莫大な収益を得たと指摘した。カンボジア国内に10か所の詐欺拠点を持ち、作業員を監禁して強制的に働かせていたという。
チェン氏は中国からの移民で不動産開発などでグループを成長させた。カンボジア国籍も取得し、フン・セン前首相や長男フン・マネット首相の私設顧問を務めたとされる。
米財務省は、米国で24年、東南アジアを拠点とする詐欺行為で少なくとも100億ドル(約1兆5000億円)の被害があったとし、前年比66%増加したと指摘した。グループは疑惑を否定する声明を出したが、米英両政府は資産の差し押さえを進めている。シンガポールや台湾、韓国でも拠点の摘発や資産の押収が進み、国際的な圧力が強まっている。
こうした動きに呼応してフン・セン氏の側近らの捜査を続けるのが隣国タイだ。タイ当局は11月、特殊詐欺と関連した資金洗浄の疑いで、カンボジアの上院議員リー・ヨン・パット氏の逮捕状を取った。9日には関連先としてタイ国内の邸宅やコンドミニアムなど計36か所を一斉捜索し、不動産や車など日本円で20億円近い資産を押収した。
リー・ヨン・パット氏は、カジノなどを経営する大物実業家で、フン・セン氏の側近として知られる。与党・人民党の最高指導部にあたる党中央委員会常任委員にも任命され、党中央委財政委員長にも選ばれた。党の資金源とも言われる。