トランスジェンダー女性である中川未悠さん(30)が主演し、トランスジェンダー男性である飯塚花笑(かしょう)監督(35)が手がけた映画『ブルーボーイ事件』。役と同じアイデンティティーの“当事者”を俳優として起用する意味とは何なのか、監督と主演の2人にインタビューしました。
映画『ブルーボーイ事件』は、1960年代、東京オリンピックと大阪万博に沸く日本が舞台。売春の取り締まりが強化される中、性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けた通称“ブルーボーイ”を街から一掃するため、検察が手術医を逮捕します。その違法性をめぐる裁判には、手術を受けたトランスジェンダー女性が証人として出廷し、この出来事は“ブルーボーイ事件”と呼ばれました。今作は、その史実が基になっている映画です。
今月5日には、渋谷区と青山学院大学が試写会を開催し、鑑賞後には飯塚監督と中川さんが学生たちの前に登壇しました。飯塚監督は、撮影前に中川さんと交わした会話について「私自身もトランスジェンダー男性であり、中川さんも(トランスジェンダー女性)当事者であるというところで、中川さんご自身の経験されたことや思いというのを託していただきたいと話した」と振り返りました。
――映画制作のきっかけは何でしょうか?
飯塚監督:元々、“ブルーボーイ事件”という事件名自体は物心ついたときから知ってはいたんですね。(映画の)題材探しをしていて、改めて“ブルーボーイ事件”とは何なんだろうと考える機会がありまして、トランスジェンダー女性が当時裁判に出廷されていてそこで証言されている、という裁判記録と出会ったときに、かつて先人たちがそうやって生きていらっしゃったということ自体にすごく衝撃を受けて。そこからこの映画ができないか、と調べ始めたというのが、事の発端ですね。
――中川さんは“ブルーボーイ事件”を知ったときにどう思いましたか?
中川:私も性別適合手術を受けている当事者なので、当時もし私が生きていたらきっと、もっと過酷でもっとつらい思いをしていたのかなと思うと、すごく胸が痛くなる事件だなと思いました。