『闇バイトの歴史――「名前のない犯罪」の系譜』(藤原 良・著、太田出版)の著者が述べるとおり、近年は犯罪構造の転換期なのかもしれない。【表】性犯罪の割合が高い職業(1位~10位)オレオレ詐欺、架空請求、還付金詐欺といった被害者と対面せずに金品を騙し取る特殊詐欺は、薬物の売買、強盗、殺人へと、犯罪の種類を変化させていった。そして2022年に入ると凶悪な犯罪、いわゆる「ルフィ広域強盗事件」が起こる。
そうした状況に対応すべく、警視庁は2022年4月に特殊詐欺や資金洗浄の捜査摘発に特化した「犯罪収益対策課」を新設。2003年に組織犯罪対策部が発足されて以来の大規模な組織再編だった。
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そして二〇ニ三年七月、警視庁は組織犯罪の類型として”SNSを通じて募集する闇バイトなど穏やかな結びつきで離合集散しながら犯罪を繰り返す集団”のことを『匿名・流動型犯罪グループ(通称・トクリュウ)』と定義した。(「はじめに 犯罪構造の転換期」より)
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トクリュウの最大の特徴は、内部での連絡のやりとりが、2013年に登場した「テレグラム」に代表される秘匿性の高いツールを通じて行われることだ。履歴も痕跡も残らず、案件ごとに離合集散してしまうため、芋づる式にグループを一網打尽にする従来のような捜査が難しい。
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「『こんなものがあってもいいのかな?』って不思議な感じがしましたけど、使っても違法にならないのなら、『こんな便利な物はない!』ってなりましたよ」(80ページより)
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著者の取材に対し、トクリュウの中枢被疑者(黒幕・指示役)をよく知る人物である槙岡紳也氏(仮名)はこのように述べている。
かくしてトクリュウは、正体不明のまま活発に、ありとあらゆる犯罪行為を繰り返す。2007年に起きた闇サイト殺人事件のような”面識のない者同士がインターネットを通じて犯罪グループ化する”土壌ができあがっていった。
もうひとつの問題は、”機密性が高く、手っ取り早くシノギ(収入源)にありつける”ことに魅力を感じる一般人が増えたことだ。そもそもはイベントなどでの仕込み客を指す「サクラ」が犯罪性を増していったのである。
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サクラとは「バイト感覚で兼業ができる」「フルタイムではなく隙間時間でできる」「難しい技術を習得せずに気軽に始めることができる」シゴトであり、ようは”手っ取り早く簡単にカネを手にしたい連中”のことである。
こういう不埒な願望を叶えてくれるのが、インターネットの利点を逆手に取った闇バイトやトクリュウなのだ。(95ページより)
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短期間で十分な効果を期待するタイムパフォーマンス、いわゆる「タイパ」だけを重視する短絡的な市民感覚を利用しているわけだ。しかし、「うまい話には裏がある」ことは誰もが認識しているだろうし、そうやすやすと引っかかる人間はいなさそうに思える。
ところが前出の槙岡氏は、「やる奴はSNS(闇バイト募集)でいくらでも集まりますから」と断言する。そしてSNSを通じた闇バイト案件でかき集められる実行犯は、最初から”使い捨て要員”でしかない。
それどころか、こんな意見もある。
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(ルフィ広域強盗事件の)捜査の段階で、犯人グループとの関係性を当局に疑われた経験を持つ青谷寿郎氏(仮名)によると、リクルーターの基準として闇バイトの実行役を集める際は、
「社会経験が乏しくて、政治や法律に関心もなくて、働く気はあるけど来月の給料日まで待てなくて、今日にでもカネが必要な奴が合格です」と話した。(110ページより)
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